僕は、今住んでいる賃貸住宅の一軒家の仕上げ作業を自分の手で完成させ、今生活しています。
ハウスメーカーを退職し、地元にUターンしてきた頃のことでした。
建築のデザイナーになるためにはどんなことがスキルがあればいいのか、どんなデザインをしていけばいいのかを考え始めていたころ、自分の住む場所を自分で完成させたこの出来事が僕のデザイナーとしての方向性を決めました。

ある空き家のリノベーション

この写真の建物が、今僕ら家族(嫁と息子)が暮らしている空き家のリノベーション前です。
大学を出て、5年弱関東で働き、2016年のはじめに地元に戻ってきた僕が、役場の職員さんにしょうかいされた空き家です。
古民家という感じでもなく、昭和の家という感じですが、ところどころにこだわった形跡があるこの家を気に入りました。
町の空き家を活用した移住定住事業がスタートした年だったため、町が入居者の要望を聞きながら450万円で改修をし、入居者(僕)に貸し出しをしてくれることになりました。

そこで、僕は3つのテーマをもとに改修をしてもらうことにしました。

  1. 寒くない家にすること
  2. 移住者や定住者が憧れるデザインにすること
  3. DIYを取り入れて、人の出会いを生むこと

空き家だから寒いは、間違い

空き家に住むからと言って、寒さを我慢することはできません。
快適でなければ、体と心の調子を崩してしまいます。
まして、埼玉から来てくれた嫁と、当時0歳の息子のためにも第一優先に断熱工事をしました。
空き家であっても、しっかりと断熱工事をすれば、現代の断熱レベルにあげることができます。

既存の外壁に断熱材を貼り、杉板で外観を仕上げていきます。
既存の天井は解体、勾配天井にし、吹き込み断熱を施工しました。

コンパクトな生活空間

450万円の予算内で断熱工事をしっかりしてもらうためには、工事範囲を絞ることが必要でした。
そこで、家全体の1/3だけを改修することにしました。
工事範囲としたのは、和室3間。
工事範囲と工事をしない部屋との間には、断熱扉を設置し、完全に断熱区分をわけました。

3間の空間を広く感じさせるためにいらない壁や天井を取り除きました。
窓もすべてペアガラスの新規のものを設置しました。

もとあるキッチン・浴室・洗面・トイレなどは使わないだけでなく、撤去もせずそのままにしました。
和室3間にキッチン・浴室・洗面・トイレをうまく配置し、コンパクトに暮らせるようなデザインにしました。
イメージとしては、和室の1つを浴室・洗面・トイレに使い、和室の2つをリビングキッチンにしました。
それぞれを隔てる壁は作らず、個室なのはトイレだけです。
非常にオープンな家です。

仕上げにこだわる

家の良さを人に例えると、断熱は接してみなければわからない性格。
仕上げは、初対面のイメージを決める外見です。
もちろん中身も大切ですが、これからこの家の良さを伝えるのは外見です。

中身の良さは、住んでいる僕ら家族にしかわかりません。
冬は床置きエアコン1台を常時付けっぱなしにして、生活空間のすべてで快適な気温を保つようにしています。
それでも電気代が真冬でも15,000円Upくらいで済んでいるため、石油ストーブを使っている家庭と比べると経済的にも助かっています。

外見の決め手は、床と壁です。
床は、地元産の秋田杉の無垢フローリングにし、壁は珪藻土風の塗り壁で仕上げることにしました。
水まわりはアクセントとしてタイルを施工します。
仕上げ工事を残し、町の工事は終了しました。

壁は石膏ボード、床は畳下地のままで引き渡し。

DIYでできることが増えると、これからの暮らしに楽しみが増える

ここから、僕ら家族と仲間たちのDIYがスタートです。
まずは、床の高さがバラバラだったので、床の下地を解体して、高さを合わせました。
できないと思っていたこの工事も、町に戻ってきてからであった、木肌のぬくもり社に勤める木工職人の須藤和彦さんのおかげでできました。
和彦さんは、工務店で12年間大工さんをしていたので、大工技術はすべて和彦さんから教えてもらいました。

石膏ボードには、ジョイントテープとパテの処理を地道に進め、準備を整えました。

ここまでの準備をし、休日には仲間を呼んでDIYをしていきました。

塗り壁をする僕と嫁(と息子)
はじめての塗り壁も、毎週やるごとにめきめきと腕をあげ、初めのほうに塗った部分をやりなおしたくなるほどハマりました。
最後には、完成するのがさみしくなりました。

地元の友人が旦那さんや奥さん、彼女、こどもと一緒に来てくれたりと、仲間に感謝した1か月。

床を貼るのは、緊張したけれど、全員がやればできる!というDIYの楽しさを感じました。
この経験で僕ら家族は、この家が大好きになりました。
それにちょっとした補修や暮らしが不便だと感じたところは自分たちで直したり、作ったりします。
家がどんな風につくられているかを見たり、触ったりして、知っているからできることです。

ハウスメーカーに勤めているときは、営業や現場監督・職人もお施主様も、家づくりとの関係性がどこか希薄なことにショックを受けたこともありました。
もっと、みんなが家づくりに絡んで、楽しくするべきだという思いが、このDIYという方法で解決できる気がしました。

DIYを取り入れる家づくり

そこで僕は、この経験をみんなにしてもらいたいと思って、リフォームやものづくりにはDIYを取り入れていこうと決めました。
この後に、古民家の改修や空き家の改修をすることになるのだけれど、その時もみんなにDIYをしてもらって完成させました。
2017年の4月からは、毎月DIYワークショップをしているのだけれど、どんどん電動工具を使いこなしていくみんなを見て、うれしくなります。

このcochiデザイン事務所では、この経験がもとになったデザインが生み出されます。
DIYで完成させるのは、自分の家だけではなくその先の暮らしなんだということを広めていこうと思います。